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増幅遺伝子の単離アプローチ
食道扁平上皮癌(ESC)では上皮成長因子受容体(EGFR; 7p12)、原癌遺伝子c-myc(MYC; 8q24)、サイクリンD1(CCND1; 11q13)などの増幅が高頻度に起こり、予後をはじめ種々の臨床病態と関連することが示されている。私たちは、これら以外のESCの発症や進展に関わる癌関連遺伝子の探索を目的に、細胞株や切除試料のCGH解析を進めてきた3-5)。
31種類のESC細胞株(KYSEシリーズ)のCGH解析の結果、既知の領域以外にいくつもの新規増幅領域を検出した5)。その中で11q22増幅は、これまでのCGH解析でグリオーマ、腎癌、胃癌などでの報告があり、病型を越えて腫瘍の悪性形質獲得に関わる遺伝子の存在が疑われた。このため、11q22増幅の最小共通増幅単位(SRO; the smallest region of overlapping)と標的遺伝子の同定を進めた。(図2)
まず、11q22増幅を有する複数のESC細胞株を対象に、データベース(NCBI;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/、など)から選択したBAC(bacterial artificial chromosome)クローンをプローブにしたFISH解析を行って詳細な増幅地図を作製し、SROを約1.8メガベース(Mb)に限局化した。
データベース上この領域内には12種類の遺伝子がマップされていることから、次にこれら全ての遺伝子の増幅と発現の程度をそれぞれサザンおよびノザン法により比較した。その結果、アポトーシス阻害遺伝子IAPファミリーに属するcIAP1のみが増幅に伴い発現亢進しており、本遺伝子が11q22増幅の標的遺伝子であることがわかった6)。(図3、4)
cIAP1はcaspase 3、7、9を阻害することでアポトーシスを阻害することが知られており、その増幅に伴う活性亢進は細胞死を回避し異常増殖を行う腫瘍にとって都合が良い。実際、cIAP1増幅のあるESC細胞株はない株に比較して抗癌剤や放射線で誘発される細胞死に抵抗性を示した(図5、6)6)。
ESCと同じ扁平上皮癌で、cIAP1増幅を約10%に検出する子宮頚癌(CSCC)においても、放射線単独治療を受けたCSCC患者の治療前生検材料を用いた免疫染色による検討から、cIAP1核染色陽性群が非陽性群に比較し治療後の生存期間ならびに局所非再発期間が有意に短いことが判明した。(図7)
これらの結果は、cIAP1がESCやCSCCなどの悪性度判定や治療反応性予測の有用なバイオマーカーであることを示し、さらに治療の新たな分子標的になる可能性を示唆している。
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