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おわりに

癌細胞において特異的で高頻度に出現する遺伝子異常があり、これに起因する変異蛋白質が見つかれば、それは癌治療薬のデザインの格好の標的分子となる。中でも、遺伝子異常がゲノム一次構造異常による場合には、高度に癌細胞特異的であり、例えば乳癌における増幅遺伝子ERBB2産物を標的とした抗erb- b2抗体ハーセプチン、あるいは慢性骨髄性白血病のPh転座によって活性化されるBCR-ABLチロシンキナ−ゼを標的とした化合物STI571CML (グリーベック)に代表されるように、癌細胞に特異性が高く副作用の少ない画期的な分子特異的癌治療薬の開発につながる。

従って、腫瘍細胞のゲノム一次構造異常の網羅的スクリーニングによりnonrandomな変化を見出し、このゲノム変異に直結して機能異常を起こす遺伝子(群)を同定することは、腫瘍の増殖や進展機序の解明だけでなく、癌治療の標的分子候補の決定に直結する重要な戦略である。さらに、この遺伝子異常をバイオマーカーにした癌の存在診断あるいは予後推定などの質的診断が可能であり、臨床的な意義は大きい。

最近、Spectral Genomics社から全染色体を約1000個のBACクローンでカバーしたCGHマイクロアレイが、またVysis社から300個の癌関連遺伝子や各染色体のテロメアを含むゲノムDNAをスポットしたCGHマイクロアレイが発売されたのもこのような流れを受けてのことと考えられる。CGHマイクロアレイを用いてゲノムコピー数異常を示す領域をhigh-throughputに詳細に探索し標的遺伝子を速やかに同定していくことが、今後癌のトランスレーショナルリサーチを展開する上で重要なアプローチの一つであることは間違いない。既に3万遺伝子の発現を網羅的に解析できる国産のDNAマイクロアレイ(AceGene, (株)DNAチップ研究所日立ソフトウェアエンジニアリング(株))も比較的安価で供給されて来ており、疾患の病態解明においてゲノム構造異常・発現機能相関の体系的なデータ収集も可能な環境が整ってきている。