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CGHアレイによるhigh-throughputな癌ゲノムコピー数異常の解析
前項で示した染色体標本を用いるCGH法で検出した新規増幅領域からの標的遺伝子同定のアプローチでわかるように、従来のCGH法ではその低い分解能のために、得られたゲノム異常のデータから標的遺伝子への到達までいくつものステップが必要であり、豊富なゲノムシークエンス情報に直結していない。このため、臨床検体を含めゲノムコピー数異常の検出から標的遺伝子候補の到達までをさらに迅速に行うための新しいツールが必須であった。
マイクロアレイ技術の開発は数万種類の遺伝子の発現レベルを網羅的、体系的に検出することを可能にしたが、この技術はCGH法にも応用できる。すなわち、従来のCGH法において使用される染色体標本に代わり、多数のクローン化DNA断片をアレイ化したスライドグラスを用いてCGHを行うことになり(アレイ CGH)、それぞれ異なる蛍光色素(例えばCy3とCy5)でラベルした腫瘍ならびに正常細胞由来DNA由来の蛍光シグナルの強度比をもとにアレイ化されたDNA断片に相当する領域の腫瘍DNAのコピー数を定量化できる(図8)。アレイ化するDNAとして、通常数100kbのヒトゲノム断片をクローン化したBACクローンそのものや、このBACを鋳型にDOP-PCR法などでクローン化ゲノム断片を増やした産物を使う方法が標準化されており7)、このようなシステムでは、コピ-数の増加、欠失とも1コピーレベルの変化を検出することが可能とされている8)。
CGHマイクロアレイの利用により、従来のCGH法を用いた場合に問題となっていた点を解決することができる。具体的には、次のような点が挙げられる。
例えばハプロイドあたり約3200Mbのヒトゲノムにおいては、3000個のクローンを均等に配置したアレイを作製することで、ほぼ1Mb刻みでゲノムワイドに染色体コピー数の異常のスクリーニングが可能になる。しかも、スクリーニングを行った結果から、ゲノムコピー数異常の位置、広さ、程度、標的遺伝子の候補群といった情報が即座に1Mbの解像度ではあるが得ることができる。もちろん、全染色体にわたり間断なく配置されたBACコンティグをアレイ化すれば、数100kbレベルの高解像度CGHアレイも作製可能である。現在私たちは、以下のアレイを作成している(図9)。
脚注 *ゲノムワイドのCGHマイクロアレイの作製は国立がんセンター細田文恵、大木操両博士との共同研究。
これらを用いて癌だけではなく原因不明とされる自閉症などの遺伝疾患の背景にある染色体のcryptic aberrationの検出に応用することを計画している。実際に、癌関連遺伝子異常検出アレイを用いて、前述のESC細胞株における癌関連遺伝子のゲノムコピー数異常の検索を行うと、図9に示すようにcIAP1増幅細胞株においては、この遺伝子を含むスポットにおける腫瘍DNA由来のシグナル(Cy3)の増強(Cy3/Cy5比の上昇)が既知の癌関連遺伝子同様検出された。 |